『最新学説で読み解く 日本の神話』(TJMOOK 宝島社) で、部分執筆を担当しました。

~淡路島の鉄器工房~

 淡路島で、平成21年に五斗長垣内遺跡ですでに発見されていた鉄製武器工房に続き、昨年平成29年、舟木遺跡で新たに鉄器工房跡4棟が発見されました。ともに、一般的時代区分で言うと弥生後期の遺跡です。舟木遺跡の鉄器工房は主に生活具の生産が中心であると調査されていて、淡路島ではどうやら武具と生活具の鉄生産工場が住み分けられていたと考えられています。ヤマト政権またはそれに準じる畿内の勢力が鉄製品加工部署として淡路島を用意したものかはわかりませんが、日本書紀によれば淡路の海人が武器を帯びた軍人として登場して部分勢力に加勢していますから、淡路島には一個の独立勢力があった可能性の方が大きいかもしれません。

 五斗長垣内遺跡から出土した鉄製武器向けの工房は12棟、武器遺物は127点とかなり規模の大きいもので、弥生時代、特に後期はひろく西日本での戦乱の日常化が推測され、神武の東征と呼ばれている出来事の実在を予測させるものでもあります。さて、武器はけっこう遺物として出土しますが、鎧であるとかの防具はあまり出土例がありません。古墳時代とみられる遺跡からは小鉄片を連ねた鎧も出ますが、弥生の遺跡からはあまり出ません。これはおそらく防具の素材を木材によっていたからでしょう。同様に、当時の服飾についても、その素材性から出ないわけで、とりわけこのあたりは、どうも興味のつきないところであります。

 ヤマト政権以前に東日本に存在した一大国家について研究を重ねられている田中英道東北大名誉教授の著書『高天原は関東にあった』『日本の起源は日高見国にあった』『天孫降臨とは何だったのか』(勉誠出版)についても紹介申し上げています。ご興味ありましたら、一部コンビニにも並ぶようですので、ご覧いただければ幸甚です。


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